発心の道場〜阿波國 |
第一番 |
竺和山 霊山寺 |
霊山の釈迦の御前に巡り来て よろずの罪も消え失せにけり |
第二番 |
日照山 極楽寺 |
極楽の弥陀の浄土へ行きたくば 南無阿弥陀仏口ぐせにせよ |
第三番 |
亀光山 金泉寺 |
極楽の宝の池を思えただ 黄金の泉澄みたたえたる |
第四番 |
黒厳山 大日寺 |
眺むれば月白妙の夜半なれや ただ黒谷に墨染めの袖 |
第五番 |
無尽山 地蔵寺 |
六道の能化の地蔵大菩薩 導きたまえこの世後の世 |
第六番 |
温泉山 安楽寺 |
仮の世に知行争う無益なり 安楽国の守護を望めよ |
第七番 |
光明山 十楽寺 |
人間の八苦を早く離れなば 到らん方は九品十楽 |
第八番 |
普明山 熊谷寺 |
たきぎとり水熊谷の寺に来て 難行するも後の世のため |
第九番 |
正覚山 法輪寺 |
大乗のひほうもとがもひるがえし 転法輪の縁とこそきけ |
第十番 |
得度山 切幡寺 |
欲心をただ一筋に切幡寺 後の世まで障りとぞなる |
第十一番 |
金剛山 藤井寺 |
色も香も無比中道の藤井寺 真如の波のたたぬ日も無し |
第十二番 |
摩廬山 焼山寺 |
後の世を思えば恭敬焼山寺 死出や三途の難所ありとも |
第十三番 |
大栗山 大日寺 |
阿波の国一の宮とはゆうだすき かけて頼めやこの世後の世 |
第十四番 |
盛寿山 常楽寺 |
常楽の岸にはいつか到らまし 弘誓の船に乗り遅れずば |
第十五番 |
薬王山 国分寺 |
薄く濃くわけわけ色を染めぬれば 流転生死の秋の紅葉ば |
第十六番 |
光耀山 観音寺 |
忘れずも導きたまえ観音寺 西方世界弥陀の浄土へ |
第十七番 |
瑠璃山 井戸寺 |
面影を映してみれば井戸の水 結べば胸の垢や落ちなん |
第十八番 |
母養山 恩山寺 |
子を産めるその父母の恩山寺 訪ひがたきことはあらじな |
第十九番 |
橋池山 立江寺 |
いつかさて西のすまいの我が立江 弘誓の船に乗りて到らん |
第廿番 |
霊鷲山 鶴林寺 |
しげりつる鶴の林をしるべにて 大師ぞいます地蔵帝釈 |
第廿一番 |
舎真山 太龍寺 |
太龍の常にすむぞやげに岩屋 舎心聞持は守護のためなり |
第廿二番 |
白水山 平等寺 |
平等にへだてのなきと聞く時は あら頼もしき仏とぞみる |
第廿三番 |
医王山 薬王寺 |
皆人の病みぬる年の薬王寺 瑠璃の薬を与えまします |
修行の道場〜土佐國 |
第廿四番 |
室戸山明星院 最御崎寺 |
明星の出ぬる方の東寺 暗き迷いはなどかあらまじ |
第廿五番 |
宝珠山 津照寺 |
法の舟入るか出ずるかこの津寺 迷う我が身を乗せてたまえや |
第廿六番 |
竜頭山 金剛頂寺 |
往生に望みをかくる極楽は 月の傾く西寺の空 |
第廿七番 |
竹林山 神峰寺 |
みほとけの恵みの心神峰 山も誓いも高き水音 |
第廿八番 |
法界山 大日寺 |
露霜と罪を照らせる大日寺 などか歩みを運ばざらまし |
第廿九番 |
摩尼山 国分寺 |
国を分け宝を積みて建つ寺の 末の世までの利益残せり |
第三十番 |
百々山 善楽寺 |
人多く立ち集まれたる一の宮 昔も今も栄えぬるかな |
第三十一番 |
五台山 竹林寺 |
南無文珠三世の仏の母と聞く 我も子なれば乳こそ欲しけれ |
第三十二番 |
八葉山 禅師峰寺 |
静かなる我がみなもとの禅師峰寺 浮かぶ心は法の早船 |
第三十三番 |
高福山 雪蹊寺 |
旅の道うえしも今は高福寺 後の楽しみ有明の月 |
第三十四番 |
本尾山 種間寺 |
世の中に蒔ける五穀の種間寺 深き如来の大悲なりけり |
第三十五番 |
医王山 清滝寺 |
澄む水を汲めば心の清滝寺 波の花散る岩の羽衣 |
第三十六番 |
独鈷山 青龍寺 |
わずかなる泉に住める青龍は 仏法守護の誓いとぞ聞く |
第三十七番 |
藤井山 岩本寺 |
六つのちり五つの社あらわして 深き仁井田の神の楽しみ |
第三十八番 |
蹉?山 金剛福寺 |
補陀洛やここは岬の舟のさお とるもすつるも法の蹉?山 |
第三十九番 |
赤亀山 延光寺 |
南無薬師諸病悉除の願こめて 詣る我が身を助けましませ |
菩提の道場〜伊予國 |
第四十番 |
平城山 観自在寺 |
心願や自在の春に花咲きて 浮世のがれて住むやけだもの |
第四十一番 |
稲荷山 龍光寺 |
この神は三国流布の密教を 守り給わむ誓いとぞ聞く |
第四十二番 |
一果山 仏木寺 |
草も木も仏になれる仏木寺 なお頼もしき鬼畜人天 |
第四十三番 |
源光山 明石寺 |
聞くならく千手不思議の誓いには 大盤石も軽くあげ石 |
第四十四番 |
菅生山 大宝寺 |
今の世は大悲のめぐみ菅生山 ついには弥陀の誓いをぞ待つ |
第四十五番 |
海岸山 岩屋寺 |
大聖の祈る力のげに岩屋 石の中にも極楽ぞある |
第四十六番 |
医王山 浄瑠璃寺 |
極楽の浄瑠璃世界たくらえば 受くる苦楽は報いならまし |
第四十七番 |
熊野山 八坂寺 |
花を見て歌読む人は八坂寺 三仏じょうの縁とこそ聞け |
第四十八番 |
清滝山 西林寺 |
弥陀仏の世界をたずね行きたくば 西の林の寺にまいれよ |
第四十九番 |
西林山 浄土寺 |
十悪の我が身を捨てずそのままに 浄土の寺へまいりこそすれ |
第五十番 |
東山 繁多寺 |
よろずこそ繁多なりとも怠らず 諸病なかれと望み祈れよ |
第五十一番 |
熊野山 石手寺 |
西方をよそとは見まじ安養の 寺にまいりてうくる十楽 |
第五十二番 |
瀧雲山 太山寺 |
太山へ登れば汗の出でけれど 後の世思えば何の苦もなし |
第五十三番 |
須賀山 円明寺 |
来迎の弥陀の光の円明寺 照りそふ影は夜な夜なの月 |
第五十四番 |
近見山 延命寺 |
くもりなき鏡の縁とながむれば 残さず影をうつすものかな |
第五十五番 |
別宮山 南光坊 |
このところ三島に夢のさめぬれば 別宮とても同じ垂迹 |
第五十六番 |
金輪山 秦山寺 |
みな人のまいりてやがて秦山寺 来世の引導頼み置きつつ |
第五十七番 |
府頭山 栄福寺 |
この世には弓矢を守る八幡なり 来世は人を救う弥陀仏 |
第五十八番 |
作礼山 仙遊寺 |
立ち寄りて作礼の堂に休みつつ 六字を唱え経をよむべし |
第五十九番 |
金光山 国分寺 |
守護のため建ててあがむる国分寺 いよいよ恵む薬師なりけり |
第六十番 |
石?山 横峰寺 |
たて横に峰や山辺に寺建てて あまねく人を救うものかな |
第六十一番 |
栴檀山 香園寺 |
後の世を思えばまいれ香園寺 止めて止まらぬ白滝の水 |
第六十二番 |
天養山 宝寿寺 |
さみだれのあとに出でたる宝の井は 白坪なるや一の宮かは |
第六十三番 |
密教山 吉祥寺 |
身の内の悪しき非報を打ち捨てて みな吉祥を望み祈れよ |
第六十四番 |
石?山 前神寺 |
前は神後ろは仏極楽の 万の罪を砕く石? |
第六十五番 |
由霊山 三角寺 |
恐ろしや三つの角にも入るならば 心をまろく慈悲を念じよ |
涅槃の道場〜讃岐國 |
第六十六番 |
巨鼇山 雲辺寺 |
はるばると雲の辺りの寺に来て 月日を今は麓にぞ見る |
第六十七番 |
小松尾山 大興寺 |
植え置きし小松尾寺を眺むれば 法の教えの風ぞ吹きぬる |
第六十八番 |
七宝山 神恵寺 |
笛の音も松吹く風も琴弾くも 歌うも舞うも法のこえごえ |
第六十九番 |
七宝山 観音寺 |
観音の大悲の力強ければ 重き罪をも引き上げてたべ |
第七十番 |
七宝山 本山寺 |
本山に陀らが植えける花なれば 春こそ手折れ手向けにぞなる |
第七十一番 |
剣五山 弥谷寺 |
悪人と行き連れなんも弥谷寺 ただかりそめも善き友ぞよき |
第七十二番 |
我拝師山 曼荼羅寺 |
わずかにも曼荼羅おがむ人はただ ふたたびみたびかえらざらまし |
第七十三番 |
我拝師山 出釈迦寺 |
迷いぬる六道衆生救わんと 尊き山にいずる釈迦寺 |
第七十四番 |
医王山 甲山寺 |
十二神味方に持てる戦には 己れと心かぶと山かな |
第七十五番 |
五岳山 善通寺 |
我れ住まばよも消え果てじ善通寺 深き誓いの法のともし火 |
第七十六番 |
鶏足山 金倉寺 |
まことにも神仏僧をひらくれば 真言加持の不思議なりけり |
第七十七番 |
桑多山 道隆寺 |
願いをば仏道隆に入りはてて 菩提の月を見まく欲しさに |
第七十八番 |
仏光山 郷照寺 |
踊りはね念仏唱う道成寺 拍子をそろえ鐘を打つなり |
第七十九番 |
金華山 天皇寺(高照院) |
十楽の浮き世の中をたずぬべし 天皇さえもさすらいぞある |
第八十番 |
白牛山 国分寺 |
国を分け野山をしのぎ寺々に まいれる人を助けましませ |
第八十一番 |
綾松山 白峰山 |
霜寒く露白妙の寺のうち 御名をとなうる法の声々 |
第八十二番 |
青峰山 根香寺 |
宵の間の妙降る霜の消えぬれば 後こそ鉦の勤行の声 |
第八十三番 |
神毫山 一宮寺 |
讃岐一宮の御前にあおぎて 神の心を誰かしらいう |
第八十四番 |
南面山 千光院 屋島寺 |
梓弓屋島の宮に詣でつつ 祈りをかけて勇む武士 |
第八十五番 |
五剣山 八栗寺 |
煩悩を胸の智火にて八栗をば 修行者ならで誰かを知るべし |
第八十六番 |
補陀洛山 志度寺 |
いざさらば今宵はここに志度の寺 祈りの声を耳に触れつつ |
第八十七番 |
補陀洛山 長尾寺 |
あしびきの山鳥の尾の長尾寺 秋の夜すがら御名を唱えよ |
第八十八番 |
医王山 大窪寺 |
南無薬師諸病なかれと願いつつ 詣れる人は大窪の寺 |